ウェブ制作時のコンテンツ作成において、リソース配分は社内合意が取りにくいこと一つです。
全ての商品のコンテンツを充実させることができればよいのですが、ウェブサイトの作成の予算にはもちろん限度があり、社内のリソースを使うことにも限界があります。
ウェブサイトを作成する際に、どこにどのようにリソース配分し、コンテンツを作成するべきか?ということについてセグメンテーションという面から考えていきたいと思います。
利益率向上型のセグメンテーション
収益性を考慮した場合には、現在の利益と売上高に注目し、各商品セグメント・ターゲットにコンテンツ配分を案出することができます。
利益・売上の各次元でマトリクスを作成します。
商品やサービスをどのようにカテゴライズするかによって、結果は大きく異なります。商品単品・ターゲット・業界などで分類しますが、商品の特性によって大きく異なるので企業のマーケティング課題に応じて適切に判断する必要があります。
- 利益高・売上低:利益増大商品
- 利益高・売上高:スター商品
- 利益低・売上低:リソース浪費商品
- 利益低・売上高:回遊性商品検索流入・エントランスとして活用組み合わせなどの回遊性向上に利用
このリソース配分は、小売業などでは一般的な売り場展開の手法です。コンテンツに対する投資効率を向上させることにつながります。
未来志向のセグメンテーション
現在の売上構成ではなく、将来の市場の変化を予測した上でコンテンツ制作のリソース配分を行う、未来志向のリソース配分です。
この考え方の元となるのは、プロダクトポートフォリオマネジメントは、ボストン・コンサルティング・グループが開発した事業管理の手法です。事業の成長性と競争力に着目し、4象限に分けることで、リソース配分を最適化する考え方です。
花形事業は成長しており、さらなる投資をすることで認知度が向上したり顧客基盤が形成されたりすることで、金のなる木に育てることができます。ウェブ的に言い換えれば指名検索が増えるといった状態と言い換えることもできるでしょう。
問題児は、相対的な利益額は少ないが、市場が成長しており将来の収益が期待できるということです。しかし、この問題児はその名前が示すとおりさらなる投資が必要であり、利益を伸ばすことができなければ、負け犬になってしまいます。
ウェブサイトとして、着目するべきは花形と問題児でしょう。問題児は将来の花形事業であり、花形は将来の金のなる木なのです。もちろん、マスメディアで問題児を育てることも可能ですが、マスメディアはウェブ施策に比べて費用がかかる場合が多いですので、リスクが高くなります。
オウンドメディアの役割とは
もともとは、事業や商品の投資効率を最適化するためのフレームワークですが、ターゲットのセグメンテーションにすることも可能です。
- 地理的セグメンテーション
- 業界別セグメンテーション
- 年齢別セグメンテーション
- ライフスタイル別セグメンテーション
- 性別セグメンテーション
事業としては1セグメントでも、業界や年齢、ライフスタイルを適用することで、現在は団塊の世代向けの顧客が多いけれど、将来的には30代が成長市場と見込んでいる場合、団塊世代にはマスメディアを併用しつつ、CVRを向上させる顧客体験の向上に努め、30代にはコンテンツマーケティングで市場の創出を図るといったセグメント別の施策を切り分けることが可能です。
顧客体験改善型施策
金のなる木、花形事業の一部においては指名検索の流入が見込まれますので、商品ページから連なる顧客体験の改善が必要です。
- 商品ページの充実
- デモ・トライアル
- ダウンロードドキュメントの充実
市場創出型施策
問題児・花形事業には、コンテンツマーケティングを含む新しい市場に向けた取り組みが必要となります。
- 使い方がわかるコンテンツ
- サービスをワタシゴト化するコンテンツ
- 効果がわかるコンテンツ
もちろん、問題児においても商品ページは重要でありますし、花形事業をどのように分類するかは議論の余地がありますが、限られたリソースで最大の効果を出すための大枠の概念としてご理解いただければと思います。
コンテンツの前に、
まずはどこのセグメントに向けるか
オウンドメディアの議論において、どのようなコンテンツを作るべきか?という話題が多いですが、まずはオウンドメディアをどのような市場に向けるかという点から議論したほうが良いでしょう。
本来刈り取り施策が向いているにもかかわらず、コンテンツマーケティングを行っても指名検索が多いため、思っている収益がでないといった場合には、セグメンテーションをもう一度見直してみても良いかも知れません。
いくら良いコンテンツを作っても、良いデザインのサイトをつくっても、ターゲティングやセグメンテーションで違う方向性に向かってしまっては、その努力が報われない構造的な問題をはらんでしまい、その修正には大きなコストがかかるということを忘れてはいけません。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。

1980年生まれ 石川県金沢市出身。クリエイティブ・ディレクターとして、一部上場企業から中堅中小規模企業まで多くのウェブサイトの構築に関わる。情報設計・企画に強みを持ち、デジタルブランディングをクリエイティブ/オペレーションの両面から支援している。また、ハンズオンで流通チェーンの再建・アパレルチェーンの再建に関わり、リアル・デジタルの垣根を超えた企業変革のコンサルティングを行っている。
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